さくらんぼ



いつもの夜中の河原の橋げた
着いたのはオレが先だった
まァ
着いたって

あいつが約束通りに来るなんざァ
保証も何もねェのは
それもいつものことなんだけどさァ

「今日は来るかなァ・・」

来る途中で
酔客相手に法外な商売してた
露天のオヤジから
まっとうな値段でせしめてきたヤツ
パサパサ言うビニールの小袋から
摘み出して

プツと軸からもぎって食っちゃ
ぺ、と河原にタネ吐き出す




「さくらんぼってなァ・・」

粒でかく見えても

「その分、中のタネがでけェんだよな。」

あんま食うトコねェししかも

「そんな、取り立てて美味いモンでもねェし」

だけどまァ




「・・・何一人で語ってやがる。」


河原なのに足音たてず
イキナリ高杉が後ろから声かける

オレにゃ解ってたんだけどォ

「ナニってェ。さくらんぼの話よ。」
「それがどうした。」
「あ、高杉も食うコレ?」
「要らねぇ。」
「エー要らねェの?」
「なんで俺が要ると思うんだ。」
「だってさァ」



「高杉が欲しいって言ったじゃん。」
「・・・俺がか。」
「そー。」
「いつ?」
「イヤ、正確には言ったわけじゃねェけどな。」




ガキん頃
いいトコの坊ちゃんだったコイツは
日頃からヅラと2人
寺子屋の中でも際立ってきちんとした着物着てて
母親の趣味なんだか何だか知らねェが
ガキのクセして
着物のコーディネートもばっちりだった

でもそのせいでかコイツは
着物の汚れるようなこと
しちゃいけませんとよくよく言い含められてたらしく
その綺麗な着物に泥つけるようなこととか
絶対にしねェ奴だった

特に大人しかったワケじゃねェ
まァ思えば
ガキのわりにはマセたトコあって
しかも知恵の回りが良かったから
オレらをバカにするっつーか何つーか
そういう一歩下がった冷めたトコはあったけど
それなりに喧嘩もするし
怒りもするし
笑いもする

そんなガキだった

ただ着物の汚れるようなことだけはしねェ
頭良かったし
少し皆より小柄だったせいもあって
喧嘩するにもいつも頭脳戦で
考えるよか先に手の出るオレとは正反対

そんなコイツがある日
寺子屋の帰り道
珍しくボーッと
木の下から上を見上げてんの

見つけたのはオレ一人だった

「高杉ィ」

何してんだァ

オレが声かけたら
瞬間的に照れたみてェな気まずそうな顔したの見て
オレぁなんだかちょっとビックリした

滅多に
高杉のそんな顔
見たことなかったから

「何見てんの?」

オレが寄ってって
一緒に見上げようとしたら

「何でもねぇよバカ」

高杉は
少しくすんだ桜の花みたいな色の着物
翻して駆けてった

「何だァ、あいつ?」

オレは呆れて
何見てたんだろと上を見た
そしたらそこには
高い木の枝に
チラホラ見えるさくらんぼ
下の方の枝のはあらかたガキ共に毟られて
無くなっちまってたけど

上の方には赤くなったのが
風に揺れてた



あいつアレ
欲しかったのか?



だったら登って取りゃいーじゃん

思ってオレは木
登りかけたけどそん時に丁度
「オーイ、銀時」って
友達に呼ばれて
遊んでたらさくらんぼ取るのを忘れた

次の日
高杉の奴は寺子屋を休んで
(高杉はしょっちゅう熱とか出してた)

だったら
見舞いにあのさくらんぼ持ってってやろうと思って
オレは木のトコ行ってみたけど
誰かが昨日あの後根こそぎ取っちまったらしく
赤い実はもう一つも残ってなくて
オレは呆然と木の上を見上げてた

高杉はその後
2、3日休んだから
バカなオレはもうさくらんぼのこと
そん時は忘れちまってたんだけど

さっき
駅前でコレ売ってんの見たら
急に思い出したんだよね
あん時のこと


「高杉、アレ、欲しかったんだろ?」
「・・・・・・別に。」
「エー?でもじいっと見てたじゃん?」
「覚えてねぇ。」



嘘だね高杉ィ
別に、って
そう言う前に一瞬の間があった

オマエも
覚えてんだろ
あの時のこと



ま、いいや
後で
訊かせてもらうから

高杉ィ
オマエなんであん時あんな
ちょっと照れたみてェな困った顔した?
オレさァ
あん時かなりびっくりしたんだよね
オマエんコト
凄ェ可愛いと思ったんだもん




「んじゃ、行く?」

オレはさくらんぼの入った袋
くしゃっと閉じて
袂へ入れた

行くって何処へだと高杉は訊かねェ
こいつがここへ来た時は
そうしてイイって決まった時で
だったら
ヤることは一つだし
目的地だって決まってる

適当な連れ込み宿へシケ込んで
着物脱がせて
抱きしめりゃいい

なんてェ偶然か
オレもそういうのシてェし
(イヤそりゃもうイツだって)



「あ、そだ。」

ねちっこい口付けの途中で
ぷるんと赤くなった高杉の唇見て
オレは急に思い出して
自分の着物の袂からさくらんぼの袋を出す

けげんそうな顔する高杉の上で
ニッと笑って
さくらんぼ摘み出して
「食べるゥ?高杉ィ?」と訊くと
「バカか、お前は」と
にべも無い返事する高杉のヤツ

「あ、そー?」

オレは高杉に圧し掛かったままさくらんぼ食って
ぺ、とタネそこらへんへ吹き飛ばした後で

「んじゃ」

コレできるゥ?高杉ィ?
とさくらんぼの軸、口ん中へ入れて
オレは得意技
やってみせる

「ホラ」

口ん中から摘み出したさくらんぼの軸は
ゆるくだけど
ちゃんと

結ばれてる
オレ
こーゆーの得意なんだよね

「・・・器用なヤツだなお前は。」
「高杉もやってみ?」
「するかよ。」
「あぁー、やる前から諦めてやがんの。」
「そんな阿呆なことができるか。」
「これねェ」

結べるヤツは
キスが上手いんだってよ?

「ね?当たってるじゃん?」
「バカかお前は。」
「やっぱオレのが高杉よかキス上手いもんねェ。」
「どういう話だ。」
「んじゃやってみ?オマエにはできねーから。」
「・・・貸せ。」

はいよ、と
高杉の前にさくらんぼぶら下げると
ぱくんと食いつくの
超可愛いよなァとか思う辺り
オレも大概イカれてんだけど

ぷちんと軸ちぎって
もぐもぐ
オレよか数段ちゃんと咬んでから
手に種受けて何処に置こうかと
一瞬辺りを見回すのは
こいつがやっぱりお坊ちゃま育ちだからだ

オレは苦笑して種受け取ってポイと放り出し
「ほれ、やってみ?」と
高杉に言う

高杉は
一つだけの黒目光らせて
さくらんぼの軸口ん中へ入れて

もごもご





「あーのー、高杉ィ。」
「煩ぇ・・・後・・・ちょっとだ。」




「高杉ィ。」
「黙ってろ。」




悪ィけど
もう
待てないんでェ

「お手伝いさせて頂きますンで。」
「ちょ、銀時、てめぇ・・」

抗議の声は聞こえないフリ
食いしばる歯をこじ開けるのなんか
銀さんに取っちゃ朝飯前なんだよね高杉
オマエの身体のヨワいとこ全部
オレ知ってるからさァ

重ねた唇蠢く舌先
這う指先と押し付ける熱
同時進行で与えられたら
オマエ
ヨワいもんね高杉ィ

ガキん頃
虫の足の感触さえ苦手だったコイツの肌は
女よりももっと敏感で
男にしちゃ随分ときめ細かな白い肌の下で
ぞろり

こちらにまで感じ取れるくらい
肉のわななくのがたまんねェといつも思う

絡まった舌先にあんのは
さくらんぼの軸

だけど軸を結ぶなんてのは実はタテマエ

さくらんぼの軸
結ぶのなんかそっちのけで
高杉の舌を弄ぶと
くっ、だのえっ、だの抗議の声が続くけど
そんなのオレの知ったこっちゃねェんだよ高杉
オレの欲しいのは
オマエだけなんだからさァ

深く
口付けて
絡め取った邪魔っけな軸
ぺっ、とそこらへ吹き飛ばす

抗議の声が上がる前
袋から掴みだした新しいさくらんぼを
「エ?まだ食べンの?」と
高杉の
下の口へとやや強引に
指先で押し込んでやると悲鳴が上がる

「あ、ゴメンゴメン」

痛かったァ?と
口付けたり髪を撫でたり
乳首に口付けたりあそこ口に含んで舐めたり

そうしてっと
どんどん

高杉のカラダが体温上がって
柔らかく
湿ってって

押し込めたさくらんぼ
もっと
滑りが良くなって
奥に
押し込めることができる

「うわ、奥まで入ったねェ?」

そんなに
美味しい?と
ニッコリして高杉に訊くと
潤んだ瞳がギッ!とオレを睨んだ

「アァ、ゴメンってェ」

コレだけじゃきっと

「物足りないよなァ?」

さくらんぼを奥に
押し込めてた指
一気に引き抜いて
細っこい身体が仰け反ったとこへ
一気に違う太いモンを突っ込んだ

思わず上がる
痛みに
耐えかねたような
悲鳴を無理やりに押し殺した声

ごめん

痛ェよなァ
高杉ィ

だけどもうここまで来たら

「止まんねェ」



どんだけ

掠れた悲鳴が上がっても



だって
オマエだって
気持ちイイよなァ高杉ィ?



こんな声あげて
身体くねらせて
爪が食い込んで血が滲む程抱きしめてそれで
感じてねェなんてこと
ありえねェもんなァ?

ワザと浅く
入り口の壁だけを擦れば
もっと、と
言うように絡めた脚ごと身体が
つる草のように巻きついて締める
それでは

思い切りの最奥を擦れば今度はまた
耐え切れないとばかりに
首を振って逃げ出そうともがく身体

「高杉ィ」

オマエん中に入れたさくらんぼ

「どうなってンだろうなァ?」

まさかもう

「お腹の中まで届いちまって」

そのうちにオマエの腹ン中で

「芽ェ出したりしてな?」

そう言うと
快楽でとろりと潤んだ瞳が
それでもギロリとオレを睨んだ


「アハハ」

ウソ、と
その瞳に口付けようと身を屈めると
より深いトコを抉ることになって
刺激に耐えきれず高杉が
身を弓なりに逸らせて悲鳴上げる

「アァごめん」

そんな
気持ち良かったァ?と
ソコを集中的に抉ると

脳溶かすような
甘い掠れた高杉の悲鳴と
ダイレクトに脳まで届く
カラダ蕩かすような気持ち良さに
オレだってもう我慢利かなくなる

「ごめ・・」

高杉
オレもう
イキそ

「イっちゃって・・いい?」

返事なんか
期待してねー
オレはヤりてぇようにヤるだけだ

ヤりてェようにされた高杉は
弓なりに
反るほどに身体そらせて

パサパサ
髪を打ち振って

オレが中に
放った瞬間にビクン!って
もう何度も何度も追い上げられて
出るモンだって出なくなってた先から
甘い汁が飛び出した

高杉ィ
オマエ今
オレが中出ししたのに
感じたってワケ?



可愛い
オマエ
ホントに



感動して
口付けたら

うざったそうに
喘ぎながら

向かれた




「アッ・・・!」
「ジッとしてろってェ。」
「バカが!・・・無理だ・・!」

跳ねる高杉の汗ばんだ身体
馬乗りになって押さえつけてオレは
指を思い切り
高杉の身体の奥に突っ込んで
いろんなモン
掻き出してる最中だ

出てくんのは
白いドロドロやら

ドロドロやら

どろどろ

やら


「うっわ、どうしよう高杉ィ?」

オマエん中に入れたさくらんぼ

「取れねェわ。」



「何だと?」



剣呑に光る目で
高杉が
起き上がろうとする




「ア、ちょい待ち」



指2本
蕩けるだけ蕩けたソコへ
思い切り奥まで突っ込んで
仰け反る細っこい身体自分の身体で押さえつけて
上がる悲鳴を心地良く聞きながら
オレは高杉の身体の奥へ突っ込んだ
さくらんぼの軸を
指先で探り当てて

逃さぬように
2本の指先でしっかりと摘む

「抜くぞ?」

返事なんか
最初から待つツモリもねェから
次の瞬間には思い切り
高杉の身体ん中から
赤いチェリーを引き抜いて

湯気のたってるようなソイツを
喘いでる
高杉の口ん中へ
ぽとん

落とした



びっくりしたように見開かれ
それから
睨んでくる
充血して潤んだ片目



「なンだ?要らねェの?」


ニッとして
高杉の口ん中のさくらんぼ
軸をちぎって吸い込むように
自分の口ん中へ入れると
ペッと種を吐き出して見てろとばかりに
得意ワザ



「な?」



んべ

出して見せた舌の上には
結ばれた




ふ、

高杉の目が
霞むように微笑んだ

「てめぇはやっぱ」

飛び切りのバカだぜ銀時

掠れた声が呟くように
言ったかと思うと
高杉はかくんと
意識失うように
眠った

でもその顔は
微笑んでるようで

オレは

ガキの時代でさえ
笑うことの少なかったそいつの笑みに
酷く満足して
少し
まどろんだ




離れる体温に
目が覚める




「行くのかァ?」



声をかけた先にはもう
いつもの着物
細っこい身体に巻きつけた高杉が
キセル片手に
ドア開けて
今にも
出て行きそうだ



「一つだけ」



教えてくれよ高杉ィ



「オマエあん時」



さくらんぼの木
見上げて



「何、考えてたァ?」







「赤ぇなぁと思っただけだ」




まるで




「誰かの目」




みたいでな





エ?
ソレって




「じゃな。」




ピタ



静かに



引き戸が



閉まった








高杉
オマエ

ソレってもしかして




言葉になんねェ問いは
ずっと
尻切れトンボのまま

夜明け前の
連れ込みの

澱んだ空気ん中に
漂って





オレはワケ解んねーまま
ムシャムシャ
残りのさくらんぼ
全部食って

悪戯に

口ん中で結んださくらんぼの軸
部屋中に
撒き散らして


夜明け頃


連れ込み宿を


後に



した






cotton colour